ボディーガードにモノ申す!


なんでこんなうららかな陽気の休日日和な時にこの男に遭遇しなければならないのか。
帰りたい。
一刻も早く帰りたい。
『御徒町の恋人』を見ながらヤマトにキュンキュンしたい!


「もういいです!とにかく帰るんで。さよならっ」


私の後ろにもぞろぞろと列が出来てきたし、道端で小競り合いするのも周りの人達に迷惑がかかるし、さっさと帰ろう。
向きを変えようとしたものの、さっき振りほどいたはずの真山の手が再び私の腕を捕らえる。


「マフィンは?買わないのか?」

「いりませんよ、コンビニでシュークリーム買いますから」

「マ、マフィンだぞ。日本初出店だぞ」

「………………」


狙撃手のような無駄に鋭い目つきで凄んでくるヤツの顔は、真剣そのもの。
どんだけ甘党なんだよ。
その意外性いらないんですけど。
殺し屋みたいな目でマフィンとか言うなよ。


呆れて返す言葉も見つからずヤツの刺すような視線を無言で見つめ返していたら、三上くんが横槍を入れてきた。


「僕もタケルも大の甘党でね。スイーツのためなら何時間でも並ぶクチなの。ね、良かったら椿ちゃんにマフィンご馳走するから一緒に並ぼうよ」


結局その三上くんの誘い文句で、私は観念してその場に留まることにした。


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