ボディーガードにモノ申す!
マフィンショップはテイクアウト専門なので、買った人はどんどん捌けていく。
長い列だなぁと思っていたけれど思ったよりも早く進んでいき、あっさりとカウンターの前までやって来た。
デカい男2人が真剣にマフィンを選ぶ姿は相当な違和感があった。
後ろの若い女の子たちがクスクス笑っている声がガッツリ聞こえてくる。
この男たちと一緒に並んでた私までちょっぴり恥ずかしい思いをしてしまった。
「椿ちゃん、何にする?」
「私はなんでもいいです」
「おいおい、本気で選べよ」
三上くんの問いかけを適当に流しち私を怒る真山。
なんとも言えない空気感に吹き出しそうになっていると、ギロッと真山に睨まれた。
けっこう大きめのマフィンを2つ(チョコチップとメープルキャラメル)、三上くんと真山に買ってもらった。
真山だけは納得してない顔をしてたけども。
「マフィン、ありがとうございました〜。ということで、私はこれで……」
紙袋を掲げて深々と頭を下げて、お礼も伝えた。
風のようにその場を立ち去りたかったのに、またもや真山に腕を掴まれた。
もう、なんなの一体。お願いだから勘弁して。
振り向くと、真山はグイッと親指でそばにあったベンチを指差す。
「出来立て食わなくてどうする。行くぞ」
「は!?い、いいですっ!冷めたのが好きなんですっ!帰りますっ」
「店内のポップ見なかったのか。出来立てが一番美味しいって書いてあっただろう」
「ひいぃぃぃ」
並々ならぬマフィンへの愛情を武器に、私は三度捕らえられて強制的にベンチに座らされる。
両隣に真山と三上くんがドカッと腰を下ろす。
「僕、自販機でお茶でも買ってくるね」
と、思い出したように三上くんが立ち上がり、少し離れたところにある自販機へと向かった。
私と真山は2人きりになってしまった。