ボディーガードにモノ申す!
せっかく三上くんがお茶を買いに行ってくれているというのに、真山は先に紙袋を開けてマフィンにかぶりついている。
ヤツの手の中にはアールグレイティー&レモネードのマフィン。それを白米であるかのように大口で食べていた。
話すこともないので携帯でもいじろうとポケットから出したところで、隣から声をかけられた。
「早番の電車の帰宅ラッシュ、どうにかならないのか」
「…………え?」
画面をつけただけのスマホを片手に、私は聞き返す。
彼はベンチの背もたれにだらりと体を預けて、口をもぐもぐしながら続けた。
「もう少し時間をずらすとかしたらどうなんだ。あれだけ満員だと毎回君をかばうのが疲れる」
「なによ、自分のためってわけ?かばってくれって頼んだ覚えはないんだけど」
「よく言うよ、電車が揺れるたびにしがみついてくるくせに」
「なっ……!」
「あれを今までは他の男にやってたわけだ。そりゃどこかで勘違いした男がいてもおかしくないわな」
言いたいことをツラツラと話す真山の横顔に、裏拳でも食らわしてやりたい気分になったけれど我慢する。
「防犯ブザーは?持ち歩いてるのか?」
「あるわよ、ほら」
私はすぐさまバッグの中から卵型のシルエットの小さな防犯ブザーを出して、真山の目の前あたりでブラブラさせて見せた。
ドヤ顔をしていたら、彼は呆れたように目を細める。
「バッグに入れてちゃ意味無いだろうが。せめて外側のファスナーに付けるとか、服のベルトに引っ掛けておくとか、もっとちゃんと考えろって」
「え……そういうもん?」
「君、バカだろ」
「バ、バカってちょっと!」
面と向かって言ってくるとは、いよいよ失礼な男である!
今ここで防犯ブザーを鳴らしてもいいんだぞ!やらないけど。