ボディーガードにモノ申す!
「危機管理能力ゼロ。威勢がいいだけで実際に行動してるわけでもないし、警護人がいるから大丈夫って気を抜いてるだろ」
「い、いやそんなことは……」
「君みたいな女を襲う男の気が知れないな。色気も無いし胸も無いし」
「ちょ、ちょっとちょっと!ここで胸の大きさは関係ないでしょっ!」
しれっと話を続ける真山の腕を肘で小突いて、慌てて辺りを見回す。
三上くんがお茶を3本持ってこちらへ戻ってきたところだった。
「え、なになに?胸がどうしたって?」
「こいつの胸がさ」
「言うな!言うなーーー!!」
三上くんの質問に普通に答えようとしている真山の腕を本気で小突いたら、ついにヤツの手からマフィンがこぼれた。
そのまま地面に落ちるかと思いきや、信じられない反射神経を発揮して両足でマフィンを挟んで阻止していた。
恐るべし、スイーツへの愛。
キーワード「胸」が引っかかったらしい三上くんが、私の隣に腰かけて心配そうな表情でため息をつく。
「そういえば椿ちゃん、襲われたあの日、胸を揉みしだかれたって言ってたもんね」
「もっ、揉みしだかれてなんかないです!!触られただけ!!」
「え、そうだったっけ?」
悪気は無いんだろうけど、三上くんってけっこう口が災いする性格なんじゃないかと思い始める。
焦りまくる私を尻目に、真山はキャッチしたマフィンを再び口に運んでご満悦だ。
「揉みたくてもそれ相応の大きさの胸が無ければ諦めるしか無いもんなぁ」
「し……失礼な……」
反論したいけど言い返せない。
口をへの字にして悔しがっていたら、マフィンの最後の一口を頬張った真山が私へ視線を送ってきた。
「君さ、それだけ気が強いなら襲われた時にやり返しなよ。出来ないなら護身術を身につけるとか、色々あるだろ?」
「護身術なんて知らないもの……」
「簡単だって、女でも楽勝で出来るのたくさんあるんだから」
半笑いで完全にバカにしたような顔でそう言ってきたので、私は真山の顔の前に人差し指を突き立てた。
「そこまで言うなら、あんたが教えなさいよ!」