ボディーガードにモノ申す!


口が災いのもと。
それは三上くんではなく、私の方だった。


護身術を教えろ、なんて頼まなきゃ良かった。
そう思ったのは、それから間もなくのことだったのだ。











私は真山と2人で、暗くなった道を歩いていた。
いつもの駅で電車を降り、いつもの道を通っているだけのこと。
違うのは今日は私は仕事は無かったということ。
それなのに彼は私についてくる。


もちろん警護してくれているわけではないので、半歩後ろを歩くわけでもなければ丁寧な口調というわけでもない。
素の真山武が隣にいるわけだ。


「護身術教える報酬は、コンビニのシュークリームで手を打ってやろう」


とかなんとか隣から言ってくるから腹が立つ。


「カラオケルームとかさ、漫画喫茶の個室とかさ、そういうところでも良かったんですけどね」


一応、微力ながらボソボソと抵抗をしてみせたけれど、彼の耳には入っていない。
「チーズケーキもいいなぁ」だの「ロールケーキでもいいなぁ」だの、そんなことをつぶやいているのだから。


事の発端は私の不用意な発言のせいだった。
護身術を身につけろとか言うもんだから、売り言葉に買い言葉で(別に売られてはいないけど)「そこまで言うなら、あんたが教えなさいよ!」と啖呵を切ってしまったのがいけなかったんだ。


ヤツはニヤリを微笑み、あの鋭い目をキラッと輝かせて私を見下ろしてきたのだ。


「教えてやるよ、襲ってきた相手を返り討ちにする方法を。ただし、君の家で」


キミノイエデ?
何言ってんだ、こいつ。


目を点にして呆然とする私に、真山は肩をすくめて得意げに笑った。


「君を家まで送る時、ドアを開けながら妙にコソコソするのが気になってたんだ。他人に部屋の中を見られたくないんだろうが、どうせアイドルのポスターが貼ってあるとか、寂しくて子犬を飼ってるとか、くだらない理由だろ。この際全部見せてみろって」


ち、ち、違いますからーーー!!
あの汚部屋と化したとんでもない部屋に他人を上げるなど言語道断!
私がうわべだけの女だと主張しているようなものだ。
あそこに招き入れてはならぬ!!


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