ボディーガードにモノ申す!
必死に拒否した。
ひたすら拒否した。
だけど、真山はビクともしなかった。
「頼んできたのは君だろう。それとも何か。誰にも言えないような怪しいクスリでもあるのか?」
なんのクスリだよっ!
というツッコミを入れる前に、警察官である三上くんが「ん!?」と目を光らせてきたので返すことが出来ず。
あれよあれよと流されるままにマフィンを食べたあと、近くのハワイ発のパンケーキ屋さんに連行されて付き合わされ、最後は「アタシの居酒屋」で1時間ほど軽く飲んで解散となったのだ。
三上くんは陽気に手を振りながら、
「椿ちゃん、タケルを襲っちゃダメだからね〜!」
と明るく忠告して去っていってしまった。
どうして私が真山なんかを襲わなくちゃいけないの、三上くん……。
暗〜くて重〜い空気を身にまといながら、私はコンビニでシュークリームとロールケーキを買って真山に渡し、泣く泣くアパートまで一緒に来たのだった。
うぅ。
広瀬椿、今まで散々表面だけ磨き続けてきた私の仮面が、ついに剥がれる時が来たようだ。
この男があの汚部屋を見たら、絶対に間違いなくドン引きしてこう言うんだ。
「きったねぇ……」って。
うおおおおおおお。
この出来事を抱えたままこれからも真山に警護してもらわなきゃいけないなんて、生き地獄!生殺し!
神様どうしてそんなに意地悪なのおおおおおおお。
ガックリうなだれる私は、アパートの階段をのろのろとのぼりながら真山に言った。
「護身術教えてくれたら、すぐに帰ってください……」
「当たり前だろ」
「もしかしたら教える前に帰りたくなるかもしれませんが」
「ん?なに?聞こえなかった」
耳をそばだてる真山の言葉は無視して、私は自分の部屋の前に立つと鍵を取り出して鍵穴に差し込んだ。