ボディーガードにモノ申す!
服はあちこちに散らかり、物干しから垂れ下がる靴下や下着、朝ごはんを食べてそのままにしているシンク、足の踏み場がなんとか微妙に確保されている床。
何も無いのはベッドの上だけ。
掃除はしているけれど、服の整理はほとんどしていないに等しいので散らかりようがハンパじゃない。
さぁどうだ、真山武。
どうぞどうぞ笑ってくださいな。
正真正銘の干物女、オヤジと。罵ればいい。
そして私をさらにバカにするがいい。
もう覚悟を決めたから吹っ切れていた。
私は隣で一切声も漏らさず動きもしない男を、ゆっくりと振り返った。
途端に、真山の腕が私の肩をグイッと強い力で抱いてきた。
何がなんだか分からず、抵抗する間もなくヤツの腕の中にすっぽりと収まってしまった。
そんなバカなと言いたいところなのに、残念なことに私の心臓がドックン!!と全身に響くように震える。
「な、なにを……」
戸惑ってどうにか声を絞り出すと、真山の低い声が聞こえた。
「やった奴に心当たりはあるのか?」
「………………は?」
「君の部屋を荒らした奴に、心当たりはあるのか聞いてるんだ」
「…………………………えっ?」
ガバッと勢いよく顔を上げてヤツの顔を見つめる。
どこか警戒したような険しい表情で、真山が部屋を見回していた。
「俺がたまたま一緒で良かった。これだけ荒らされてちゃ何を盗まれたかも分かんないだろ」
「い、い、いや。ちょっと待って」
「コタローに連絡する。駆けつけるまで通帳とか印鑑とか、大事なものを盗られてないか確認した方がいい」
「ちょちょちょ!ちょっと待ってってば!」
「気づかなかったけど玄関の鍵もピッキングされてたのかな。だとしたら合鍵作られてるかもしれないな。ちょっと見てくる」
「ま、待って!」
私が止めるのも聞かず、真山は体を離すと颯爽と玄関に戻ろうとリビングから出ていく。
慌ててヤツの着ていた服を引っ張ってどうにか食い止める。