ボディーガードにモノ申す!
6、 恐怖を吹き飛ばす力をください。
「広瀬さん、おはようございます」
朝、家から出たらちょうど隣の部屋から杉田さんが出てきたところで、いつものように挨拶された。
私も微笑んで、「おはようございます」と挨拶を返す。
2人で駅までの道のりを歩いている途中で、隣を歩く杉田さんにふと尋ねられた。
「つかぬことをお伺いしますが、昨夜って部屋の模様替えとかしてました?すごい物音が聞こえたので……」
「あっ、響いちゃってましたか!?すみませんっ」
慌ててペコリと頭を下げる。
アパートの壁は薄いとは言いがたいので、大きな物音でもさせようものなら隣の部屋へ聞こえてしまう恐れがある。
杉田さんの部屋からはあまり物音は聞こえた試しはないのだけれど、何もかもが大雑把な私の部屋からはきっとよく物音がしているだろう。
「模様替えではなくて、ちょっと断捨離をしてたんですよね……」
「へぇ、断捨離!なんでまた?」
なんで、と聞かれてしまうとどう答えるべきか迷うところでもある。
3日後にまた真山が私の部屋に来ることになってしまったので、それまでに服を整理しておきたいと思ったのだ。
見られたらマズい下着とか、諸々をなんとかその日までには収納しておきたいがための断捨離だ。
仕事柄、服はどんどん増えていくので、古いものや着ないものは捨てていかないと追いつかない。
昨日はあれこれ仕分けをしていたらあっという間に時間が日付を超えてしまい、途中で寝たのだった。
「ちょっと、今度友人がうちに遊びに来ることになりまして……片付けようかなぁと」
それらしい理由を見つけ出して説明すると、杉田さんはフフフと笑みを浮かべた。
「もしかして……彼氏、とか?」
「ちっ、違いますよ!!友人です、友人!!」
「そうですか」
慌てふためく私をよそに、杉田さんはあっさりとうなずいてそれ以上は特に追求してくることは無かった。