ボディーガードにモノ申す!


その後、お店は開店時間を迎えて無事にオープン。
お昼前には遅番の佳織ちゃんが出勤してきて、2人で店頭に立った。


平日は基本的に売上の伸びはあまり良くない。
橋浦さんと2人だとそうでもないが、佳織ちゃんと一緒だとついついおしゃべりが多くなってしまう。


この時も接客していたお客様が帽子とワイドパンツを購入し、お店をあとにした頃だった。


「佳織ちゃん、おたたみお願いね。私はB品の処理してるから」


私がそう言ってレジカウンターの中に入り込むと、佳織ちゃんは「はーい」指示通りにお店の服を手早く畳む。


正直言って、お店の商品はほとんど綺麗に畳まれているしハンガーの乱れもない。
でも、だからと言って何もしないでボーッと立っていたのでは外を通る人から「暇な店だな」と思われてしまう。
そうならないように常に販売員は動いていなければならないのだ。


その「動く=おたたみ」という作業は、きっとどこのお店もやっているはず。
暇っていう訳では無いんですよ、のアピールなのだ。


今日は大ぶりなピアスをつけた佳織ちゃんが、服を畳む作業を続けながら話しかけてきた。


「椿さん、ちょっと聞いてもいいですか?」

「うん。なに?」


糸のほつれや、小さな穴などを見つけたB品を袋に入れて返品の処理をしていた私は、視線を上げることなく聞き返す。


「昨日、椿さん……『アタシの居酒屋』にいましたよね!?」

「…………あぁ、行ったわ。そういえば」


真山と三上くんに強制的に連行されただけなんだけど。
でもそのことを佳織ちゃんが知っているということは。


ビックリして顔を上げると、佳織ちゃんがニヤニヤと何かを言いたげな含み笑いをしていた。


< 82 / 153 >

この作品をシェア

pagetop