ボディーガードにモノ申す!
やがて、私のアパートが見えてきた。
今夜も密かに断捨離を頑張ろう。
真山には絶対言わないで、1人で片付けを終わらせるつもりだった。
彼が今度うちに来た時に、あっと驚かせてやりたかったから。
私だってやれば出来るのよ!とか言ってやりたい。
私が部屋に入るのを見届けてからでないと帰ってくれないので、ドアの鍵を開けて少し隙間を空けてから真山の方を見やる。
彼は営業スマイルで見送っていた。
「ねぇ、まだ仕事中?」
まだ仕事モードなのか、それともオフになったのか不明なので試しに聞いてみる。
すると、真山は「仕事中です」と表情を変えずに答えてきた。
「じゃあ、仕事中にすみませんが。これ、良かったらどうぞ」
手に持っていた袋の中のひとつを彼に渡した。
それは、デパ地下で購入したワッフルだった。
一瞬、明らかに仕事中であることを忘れて、真山が目を見開いて感動の色を浮かべたのが分かった。
それはすぐに彼自身によって元に戻った。
「ですがこういったものを受け取るわけには……」
「つべこべ言わずに受け取ったらいいじゃない。ものすごーく食べたそうにしてたくせに」
「それは当たっておりますが」
「ふふ、でしょ?どうせ私が部屋に入ったらお仕事終わりなんだから、受け取って下さい」
「どうも、ありがとう」
真山の敬語が緩んで、ついでに表情も緩んで。
作った笑顔じゃない、ふわりとした笑みが浮かんでいた。
その顔にドキリとする。