ボディーガードにモノ申す!


自分では顔に出してるつもりはなくても、やはりいつもの元気が感じられないらしい。
貝山くんと同様、職場の店長である橋浦さんにも指摘された。


「広瀬、覇気が無いな。男に振られでもしたのか?」


今日はハットをかぶり、ちょっとキレイめな服装の橋浦さん。
ものすごくしつこいが、相変わらずあの有名な日本人メジャーリーガーにとことん似ている。
もういっそのことそっくりさん大会とかに出て欲しい。


そんな彼が口にするのは、たいてい私をバカにすることばかりだ。


「振られる相手もおりませんよ……。橋浦さんってば本当に失礼ですね!」

「相手ならいるだろ?元木に聞いたぞ〜、毎日迎えに来る奴がいるって」


佳織ちゃん!余計なことを!
ニヤけている橋浦さんを横目に否定する。


「アレはそういうのじゃないんです」

「そういうのじゃなかったら、なんなんだ?」

「彼は私の……」


ボディーガード、です。


答えられないのに答えようとして、自分で気がついた。
そうだ、真山武はただのボディーガードであるということを。仕事だから守ってくれるのであって、それ以上の理由など無いということを。
お金を払って雇っているに過ぎない。


そう思ったら、胸がチクチクした。


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