たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 



(先生は知らないだろうけど、俺、父と一緒に住んでないんですよ)



そう言って、いつも通りに笑っていられたらどんなに楽だっただろう。


……“お父さんと、あまり上手くいってないのか”、だって?


そんなこと、知らない。最後に父親と話したのはいつなのかさえ、覚えていないのに。


父のこと。すぐにでも割り切って連絡ができたのなら、こんな風に悩んだりしなかった。


上手くいってない程度の話であれば、三者面談のスケジュール表を最初に貰った時点で、すぐに連絡してるんだ。


先生は、そんなこと少しもわかってないだろう?


単純に、思春期によくある反抗期だと思ってるんだから。


本棚の前で佇みながら、心の中でそんなことばかりを毒づいた。


だけど、その何もかもを言葉にすることなく、ひたすらに胸の中で繰り返し続ける自分は───




「…………栞?」




どんなに、割り切りたいと願っても。


自分達の未来の為に、“子供”である俺を簡単に切り捨てた、“大人”な両親のことを、未だに許せてはいないんだ。


 
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