たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「……恥ずかしい大人、だね」
突然響いたのは、酷く静かで冷たい声。
それと同時に、痴漢の手が勢い良く離れた。
(……っ、)
更に、大きく揺れた電車と共に、後ろにいた痴漢の気配が消え、混乱して何がなんだかわからないまま、私はようやく顔を上げた。
(な、何が起きたの……?)
「……もう、大丈夫だから」
そして、そんな柔らかい声が聞こえたと、ほぼ同時。
今度は背中が、温かい何かに包まれた。