たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
* * *
「それで、その後すぐに父から連絡があって……今日無事に三者面談も終わって、改めて進路も確定した」
「……っ、」
「俺が受ける私立医大、父さんの出身校なんだ」
“いよいよファザコンみたいで気持ち悪いかな?”なんて。
すぐおどけた様にそんなことを言う先輩のそれが、先輩なりの照れ隠しだってことに、今更気付く。
先輩が淡々と話すのを、何も言わずに……何も言えずに、聞いていた。
過去、先輩とご両親との間に出来た溝の全てはまだまだ埋まっていないだろう。
それでも確実に一歩、お互いが歩み寄ったことで出来た道。
お父さんとのことを話す先輩の表情はスッキリとしていて、そんな先輩を見たら安堵すると共に、心の底から嬉しくなった。