たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
(せ……先輩?)
「俺は、栞に会いたかったんだけど」
「……っ、」
「なんて、嘘。…………っていうのが、嘘」
言いながら、チラリとこちらへ視線を寄越した先輩に、血液が沸騰したかのように顔が熱を持っていくのがわかった。
─── 先輩は、ズルイ。
こんな、私なんか絶対に言えない言葉をサラリと当たり前のように言ってしまうんだ。
嘘、なんて。冗談混じりに、そんなことが言えるんだから。
先輩は、冗談で言ったのかもしれない。だけど、私は本当に、ずっとずっと先輩に会いたかったんです。
先輩に会えなくて寂しくて、毎日先輩のことを考えてました。
先輩のこと、心配だって毎日してたし、先輩に会えたことが本当に本当に嬉しかった。
でも……私は。
私は先輩みたいに、そんなことサラリとなんて言えないから。
だって、先輩が私に抱いてくれているであろう感情と、私が先輩に対して抱いている感情は、全く違うものだから。