たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


浴衣の入っていた箱を片付けながら、うっとりと目を細めるお母さんが先輩と顔を合わせたのは、数週間前のこと。


樹生先輩が……か、彼氏……!

想像するだけでも申し訳ないのに、でも、彼氏って素敵な響きだなぁ……なんて思ってしまう私は本当に末期だ。


確かに、樹生先輩が会いに来てくれたあの日を境に、先輩とは以前と比べて格段に連絡を取り合うことが増えた。


内容は当たり障りのない世間話から、アルバイトの愚痴や勉強の相談、そして─── 図書館での待ち合わせの予定など。


流石に毎日連絡を取る、なんてことはないけれど、アユちゃんや蓮司と連絡を取っているような、“友達同士”のやり取りを先輩ともするようになった。


……なんて。

私は先輩から連絡が来るたびに心躍らせているから、決して友達同士なんて感覚ではないのだけれど。


それでも以前は図書館で先輩と会えても、それはただの偶然だったのに……今はお互いの予定や予め行くつもりの日などを教えあうようになり、“偶然”は“必然”へと変化を遂げた。



 
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