たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「そうだ!今度送ってもらった時は、樹生くんも家で夕飯食べて行ってもらいましょうよ〜。ほら、樹生くん一人暮らししてるってこの間言ってたでしょう?だから、たまには大勢で食べるのも楽しいだろうし〜」


「(……そんなこと言って、お母さんが樹生先輩とゆっくり話したいだけでしょ?)」


「あらぁ、バレた?」



ふふふ、なんて言いながらペロリと舌を出して笑ったお母さんに、視線だけで抗議を送ると携帯の画面へと視線を落とした。


【予定通り17時に、駅前のコーヒーショップで】


十数分前に送られてきていた先輩からのメールに、高鳴る胸を落ち着かせながら【了解しました】とだけ返せば、再び携帯に緑色のランプが点る。


【栞の浴衣姿、楽しみにしてる】


「……っ、」


読みながら、先輩がどんな表情でこの一言を送信したのか容易に想像できてしまって……


そして先輩のことだから、これを読んだ私がどんな反応をするかもお見通しなんだろう。


こんな風に、たった一文で人の心を掻き乱す先輩と、これから初めての“お祭りデート”。


今日は、思いっきり心の準備をしていかなければと、鏡の中の自分を見ながら改めて誓った。


 
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