たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


* * *




「なぁなぁ、今年の祭り、どうする!?爺ちゃんがさぁ、今年こそアッキーと樹生も神輿担げって!」



夏休みも半ばを過ぎた頃、受験勉強の息抜きと称して我が家にやってきたアキとタマ。


アキは当初の予定通りスポーツ医学を学ぶ為の大学を希望、予定は未定なんて言っていたタマも最終的には車の整備士を目指すことに決め、専門学校への進学を希望した。


それぞれが具体的な進路を決めた今、受験生にとっての夏休みは夏休みであって、そうでないようなものだ。


何をやろうにも常に“受験”という言葉は着いて廻るし、アキのように予備校に通っていれば夏期講習で忙しい。


高校生活最後の夏休みなのに、思いっきり羽根を伸ばせないのは正直つまらない……なんて考えてしまうのは、この2人のせいだと思う。


一昨年と去年の夏休みは、海や花火に夏祭り、バーベキューに俺の部屋に泊まり込んで朝までゲーム……と、文字通り夏休みを“満喫”したから。


そんな2人とも、近い将来“離れ離れ”になることを意識してしまえば、正直寂しいと思う……なんて、入学した当初の自分が聞いたら驚くだろう。


……そんなこと、例え口が避けても2人には言わないけど。

 
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