たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
* * *
約束の時間の5分前。
待ち合わせの場所に着いてから【着きました】と、先輩へ連絡をすると、胸に手を当て静かに息を吐いた。
駅前のコーヒーショップ前から、改札の方へと視線を移せば艶やかな浴衣姿の女の子が目に留まる。
(……大丈夫、かな?)
可愛らしい女の子たちを見て、つい不安が胸を過った。
おばあちゃんが私の為にと縫ってくれた浴衣は、撫子(なでしこ)柄の素朴で可愛らしいもの。
私は気に入っているけれど、みんなが着ている浴衣に比べたら、少し地味かもしれない。
それでも私にとっては、おばあちゃんとの大切な思い出の詰まった浴衣。
この浴衣をくれた時おばあちゃんが、「撫子柄の浴衣にはね……優美、笑顔という意味があるんだよ」と、こっそり教えてくれた。