たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
今日も隙がない程に完璧な先輩を見上げ、返す言葉も忘れて頬を染めれば「へぇ……」と、先輩は何故か感心したような声を漏らした。
「撫子柄の浴衣、か。栞のおばあさんの、栞への愛情が伝わってくるね」
「……っ、」
容姿だけじゃない。聡明な先輩は、人の気持ちを読む超能力でもあるんじゃないかと、時々本気で思うことがある。
撫子柄の、この浴衣の意味も先輩はお見通しだなんて。
「とりあえず、行こうか」
(え?)
先輩を見上げたまま固まっている私に、そっと先輩の綺麗な手が差し出された。
それに思わず先輩の顔と手を交互に見れば、考える間もなく空いていた方の手を掴まれた。