たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「そ、相馬くん!?」
一番に声を上げたのは、浴衣を着た可愛らしい女の人だった。
余程驚いたのか、人混みでも通る声に思わず身体がビクリと揺れる。
そして、隣にいる男の人と一言二言何かを話すと、今度は満面の笑みを浮かべて私達の方へと歩いてくる。
(え、え……?先輩?)
それにどうすることも出来ずに先輩を見上げれば、視線の先の先輩もまた困惑したような表情を浮かべていて。
助けを求めるかのごとく、繋いでいる手に力を込めれば、先輩の肩が小さく揺れた。
「……っ、」
と。私を見て、漸く我に返った先輩が強張っていた表情を緩める。
柔らかな雰囲気を取り戻した先輩に安堵して、ゆっくりと口を開こうとすると、
「(せ、先輩……あの、)」
「樹生、偶然過ぎだろ!」
言葉は、既に私達の目の前まで来ていた二人に止められてしまった。