たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


声も、初対面だというのに、どこか心地良さを感じる艶(つや)のようなものがあり、聞いているだけでなんだか安心感に包まれる。


更に、まじまじと見てみれば、彼はとても綺麗な顔をしていて、背も私よりも随分高い。


スッ、と通った鼻筋に、切れ長の目、薄い唇。


全てのパーツが絶妙なバランスで保たれたその顔に彼の持つ雰囲気も相まって、大袈裟な表現かもしれないけれど、なんだか芸術品を思わせた。


全然、気が付かなかった、けど……なんか、すごくカッコいい人に、助けられてたんだ……



「まぁでも、とりあえず。もしかしたら、常習犯かもしれないし、駅員には特徴とか顔とか報告はしておく。あと、見掛けたけど捕まえられなかった、ってことも」


「……!」


「キミは……思い出したくもないだろうし、俺だけで報告行ってくる感じでいい?」



彼の問いに一瞬迷ってから頷けば、彼はその整った顔で優しく微笑み返してくれた。


 
< 21 / 475 >

この作品をシェア

pagetop