たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「じゃあ、俺はこれで─── 」
(じ、時間……!!!)
「え?」
(図書室開けないと……!!初日から遅刻なんて、言い訳できない……!!)
慌てて辺りを見渡せば、私が乗ってきた電車から降りてきた人達は、もうすっかりいなくなっていて、一体どれくらい彼を引き止めてしまっていたのだろうと、今更思う。
(ご迷惑、お掛けしました……!本当にありがとうございました……!)
「ちょっ……、キミ……!!」
伝わるはずもないと思いながらも、精一杯の口パクでそう告げると、私は慌ててお辞儀をして駆け出した。
そんな私を引き止める彼の声が遥か後方で聞こえた気がしたけれど。
私はそのあと、一度も振り返ることなく駅の改札を通り抜けた。
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『Lilac(ライラック)』
純潔・初恋