たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
そっと、携帯を開くとそこに言葉を打ち込んだ。
ゆっくりと歩を進め、蓮司の前に立つと携帯の画面を向ける。
「(……私は、自分の意志でここにいる。それを否定する権利は蓮司にはないし、私は私なりに、最大限の注意は……してる、つもり)」
「……っ、」
「(樹生先輩は、そんな私の気持ちを汲んで、お祭りに連れてきてくれた。先輩のおかげで、今日はたくさん笑ったよ?本当に本当に、楽しかったの)」
「……、」
「(先輩は、蓮司が思ってるような人じゃない。優しくて、思いやりがあって、とても温かい人)」
「……で、でも、」
「(……先輩が女の人と遊んでいることも、先輩自身から聞いた。でも、蓮司が心配するようなことは何もないよ?当たり前だけど、先輩に嫌なことをされたこともないし、先輩はそんなこと絶対にする人じゃない。そもそも先輩と私じゃ不釣り合い過ぎて、心配することすら笑っちゃうくらい)」
文字を打ちながら、思わず自嘲の笑みが零れた。
苦しくて悲しくて、仕方がない。
蓮司へと身体を向けているせいで、今の私の表情は背後にいる先輩には見えていないだろう。
……背を向けていて、良かった。
こんな、情けない顔。先輩に見られたら、優しい先輩をただ困らせてしまうに違いないから。