たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
─── 先輩の、何気ない仕草に胸がざわめいた。
けれど、その不安を口にする間もなく、まるで見計らったかのようにホームに滑り込んできた電車。
騒がしく行き交う人の波に逆らってドアを潜れば、お決まりの座席に当たり前のように、2人で腰を下ろした。
目の前には、見慣れたOLさんと、学生さん。
その姿に改めて、ああ、今日からまた学校が始まるんだな……なんて考えて、高校3年生である先輩との、この朝の時間が本当にあと僅かであることを実感した。
樹生先輩は受験が控えているけれど、優秀な先輩は推薦を貰っての受験が確定していて、早ければ2学期の終わりには他の受験生より一足先に受験を終えてしまう。
先輩のことだから、そのまま難なく合格してしまうんだろう。
実際、受験勉強だって合格してからの勉強についていけなかったら困るから……なんて、冗談を言っているくらいだ。