たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
Iris(アイリス)
「なぁなぁ、今日提出の進路表、なんて書いた!?」
男子校特有の騒がしさに包まれる教室で、俺の机に両手を着きながらそう問い掛けてくるのは親友の一人、玉置(たまき)、通称“タマ”だ。
「そういうタマは、なんて書いたんだよ?」
そして、前の席に座りながらタマに質問を返すのは、もう一人の親友、“アキ”。
話題は今日提出予定の、進路表について。
高校3年生、所謂(いわゆる)受験生と呼ばれる年を迎えた俺達にとっては、自分の進路を明確に示すための大事な一枚ではあるのだけれど。
「えー、俺?俺はねぇ、第一志望が野球選手でー。第二志望がサッカー選手、第三志望は“予定は未定”って書いといた!!」
「……タマ、それ、多分担任のハゲ下に殴られるよ」
「えー、なんで!?真面目にそう思ってんだから、怒られる理由なくね!?」
「いやいやいや……大体にしてタマ、野球部でもないし、サッカー部でもないじゃん。二つとも、スカウトとかそういうのをされる環境にいるのがまずは必要だと思うけど……」
「マジかよー!!なんで、そんな夢のないことばっかり言うわけ!?今からスカウトとか来ねぇのかな!?」
「来るわけないだろ、バカ!!っていうか、進路表だぞ、真面目に考えろよ!自分の将来のことだぞ!?」