たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


重ねられた手を握り返すように、先輩の綺麗な指を掴んだ。


私の突然のその行動に驚いたのか、先輩が動きを止めて私を見つめる。


それに曖昧な笑みを返すと、今度は携帯を取り出して、自分の気持ちを言葉にした。



「(本当のことを言えば、すごくショックでしたし、今も……ショックです。蓮司から初めてその話を聞いた時、絶対嘘だって言って、喧嘩して。私は先輩を、心の底から信じてましたから)」


「……栞」


「(ハッキリ言って、最低だとも思います。先輩の言う曖昧な関係……とか、私には理解出来ないし、理解したいとも思いません)」


「……うん、」


「(でも、先輩は後悔してるんですよね?もう絶対そういうことはしない、って。決めたんですよね?)」



私の問いに、酷く真剣な表情で一度だけ頷いた樹生先輩。


それを見て私は表情を緩めると、再び携帯に指を乗せた。


 
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