たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
Tatarian aster(シオン)
─── その些細な違和感を、辛辣に受け止めなかったことを後悔する日が来るなんて、この時は思いもしなかった。
「……栞?」
瞬く間に過ぎ去ろうとしていた9月。
今日も駅のホームに、お決まりの車両が止まる場所で2人肩を並べていれば、どこかぼんやりと遠くを見つめる栞に小さな違和感を感じた。
俺の言葉にハッと我に返ったように顔を上げた栞。
目元には小さな隈が出来ていて、どうしたのかと尋ねたら「テスト勉強で夜更しをして……」なんて、苦笑いを零した。
かという俺も、受験勉強が大詰めを迎えていた。
推薦を貰っての受験には小論文の練習も必要で、朝早くに登校したらまずは資料室に用意されている新聞を広げる。
そして、自分で決めた時間とテーマで小論文を書き上げたら、担当の教師にアドバイスをもらいにいった。
学校側からお墨付きはもらってはいるものの、難関校なだけに最後まで気を抜くわけにはいかない。