たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


拳を握り、決意を胸に顔を上げた。



「(アユちゃん、蓮司。あのね、私は本当に大丈夫だし、もうこれからは気にしないようにするから、だから─── )」


「あっ!平塚さん、いたいた!なんか今、体育の授業でうちらがいない間に、誰かが教室に入ったみたいで、黒板に平塚さんのことが─── 」



けれど、忍び寄る足音は私の気づかぬ間に、確実に直ぐ近くへと迫っていたのだ。



【人殺しの娘は、この学校から出て行け】

【平塚 栞がいると、安心して学校生活も送れない】



「っ、」


「……何よ、これ」



敵意に染まる声は耳を澄ます人間の欲求をそそり、その中の一部の人間の興味を悪意に変える。


そして、いつの間にか一つでは無くなっていた足音は、脳天気な私の足場を確実に崩していった。



 
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