たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


午後からの自習中、大学受験組ではないクラスメイトの奴らがそんな話をしているのを聞きながら、俺は一人、黙々と机に向かっていた。


窓の外を見れば予報通りの雨。

真っ白に染まる空に、今朝会った栞が傘を持っていなかったことを思い出し、大丈夫かな、なんて。


つい、そんなことを考えた。



「でもさー、父親が殺人犯だからって、子供は捕まえられなくね?」



─── だから、かもしれない。


普段はまるで気にしない、他人が他人を貶して(けなして)楽しむ、くだらない噂話に耳を澄ましてしまったのは。


ちょうどタイミング良くも栞のことを考えていたからこそ、余計にその【名前】が、鮮明に聞こえてしまったのは。


 
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