たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


再び静まり返った教室に、碧く澄み渡るような声が響いた。


聞き慣れたその声に、弾けるように顔を上げれば目を疑いたくなるほどに、予想もしていなかったその人が目の前にいる。


滲む視界に映るその人は、私を真っ直ぐに見つめると、この冷たい空気とは正反対に、酷く柔らかに微笑んだ。



(……なんで。だって、こんな……こと)



「(ど……どうして……?)」


「……傘、持ってなかったみたいだから、迎えに来た」


「……っ、」


「今日の雨は、やけに冷たいから。傘がないと、風邪引くよ?」



─── どうして樹生先輩が、ここにいるの?


 
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