たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
淡々とした口調でそう言い放ち、再び周囲を視線だけで一蹴した先輩は、その視線を今度は私へと向けた。
真っ直ぐに向けられた、綺麗な瞳。
それをひたすらに見つめ返していれば、先輩の手が静かに目の前へと差し出された。
「今日は、疲れたから……帰ろう」
「……っ、」
再び柔らかに微笑みながらそんなことを言う先輩を前に、ぼんやりと滲む視界。
一度だけ小さく頷いて、先輩の手にそっと掌を乗せると、その手は静かに握り返された。
相変わらず、ひんやりと冷たくて、今にも壊れそうなほど繊細な手。
それなのに─── その手は、誰よりも優しくて温かい。
「サボりに誘うなんて、俺も人のこと偉そうに言えないかな?」
冗談交じりにそんなことを言った先輩が、強く腕を引く。
そんな先輩の言葉を合図に私の目から零れ落ちた涙は─── もう、悲しみに染まってはいなかった。
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『Gentian(リンドウ)』
正義・誠実
悲しんでいる貴方を愛する