たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


煮え切らない俺の様子に、ギャアギャアと騒ぎ出したタマを前に曖昧な返事をしたのは、まさか朝のあの出来事を目撃されていたと思わなくて、柄にもなく少し動揺したからだ。


付き合ってんの?とか言われて、アレがそんな風に見えるのかと半ば呆れもあるけれど。


まぁ、場所が場所。高校の最寄り駅だったし、誰かに見られていたっておかしくない。


女の子という生き物に、飢えに飢えまくっている男子校の奴らが、そんな些細な出来事さえも見逃さないのは、この3年間で身に染みるくらいにはわかっていた。


誰かに彼女が出来れば、その彼女の友達を紹介しろ!!と騒ぐのは、男子校のお決まりだ。


アキだって、彼女が出来たばかりの頃は周りにしつこく頼み込まれていた。



(……どっちにしろ、面倒くさいとこ見られたな)



変な誤解が噂になって広がって、この二人以外からの、野次馬的な質問攻めに合うのはゴメンだ。


大体にして、ただ駅で話していただけなのに。


手を繋いでた……って、転びそうになったあの子の腕を、咄嗟に掴んだだけだ。


まぁ多分、あの子の着ていた制服が、駅向こうにある“可愛い子が多い”と話題になってる高校の制服だったから、そのサッカー部の奴も目敏く食いついたんだろう。


……それか、前々からあの子を見かけて気になってたか。


 
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