たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「─── と、いうわけで。別に彼女とかじゃないし、ましてや友達ですらない。強いていうなら、まぁ、知り合いレベル……でもないか」
「ほえーーー、」
「アキも、そのサッカー部の奴にまた聞かれたら、適当に誤魔化しといてよ。あ、痴漢の部分は、あの子が可哀想だし、言わないでやって」
「ん、わかった」
「でもまぁ、その子も、朝から災難だったなぁー」
「災難……っていうか、その痴漢、最低だろ」
「まぁ、そりゃそうだけどさー。でも良かったよな、樹生が気付いて助けてくれて!樹生が気付かなきゃ、そのオッサンにもっと触られちゃってたかもしんねーじゃん!!」
「うん、それはそうだけど……でも、その子、怖かっただろうな……」
俺から全てを聞き終えた二人は、それぞれ思うところの感想を述べていた。
……アキが言う通り、あの子にとってアレは朝から辛い出来事だっただろう。
実際、泣いてたし。可哀想だったとも思う。
そんなあの子を見て、俺だって痴漢に対して腹が立ったし、 嫌な気持ちになったから、実際被害に遭ったあの子の思いは相当のものだったはずだ。
と。
ぼんやりとあの子の顔を思い浮かべていたら、不意にあることに気が付いたらしいアキが、言葉を止めて俺を見た。