たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


アキさんとマリさんには、お祭りで会ったから顔と名前は一致している。


それじゃあ、この人が“タマさん”……?


……ううん、きっと違う。


だって樹生先輩から聞かされる“タマさん”は、底抜けに明るくて活発で、とても友達思いで……


そんな人が親友である樹生先輩の名前を間違えるわけがないし、申し訳ないけれどこの人と先輩が仲良くしているところは、到底想像できない。


だからきっと、こんな風に平気で嘘を吐くこの人には、絶対に着いて行ったらいけないに違いなくて───



「(は、離してくださいっ)」


「……あ?何、急に踏ん張っちゃってんのぉ?キミが連れてけって言ったんじゃんかぁ」


「(そ、そうなんですけど……や、やっぱり大丈夫です、すみませんっ)」


「はぁ?何言ってるか全然わかんねぇしぃ。まぁ、とりあえず、歩こっかぁ〜。ほらほら、いつまでもここにいたら目立つから、とりあえず向こうにさぁ……」


 
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