たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


そして、そう考えた時に、これっぽっちも自分が後悔していないことに気が付いて、申し訳ないけれど胸の奥がスッとした。


あの時、栞を守れずにいた方がきっと、後悔しただろう。


大学の推薦が取り消されることなんかよりも、栞が今以上に傷つくことの方が、ずっとずっと後悔したはずだと、ハッキリと認識出来たから。


だから、俺の心には塵ほどにも後悔なんてなくて。


説明の時にも具体的な内容には触れず、自分が悪いのだということだけを主張する俺に、先生達は半ば呆れ返っていた。


結局その後、一部始終を見ていたサッカー部の後輩たちが俺は悪くないのだと何故か必死に説明してくれたらしく、俺が殴った相手も停学になって痛み分けとなったようだけど。


保健室に運ばれたあいつは、お世話になっていたサッカー部の顧問にもコッテリと絞られたようで、様子を見に行ったアキ曰く、もう二度と俺と栞に関わるつもりもないだろうということ。


その言葉に酷く安堵した俺はまだまだ子供で、本当にこの後自分がどれだけの人間に迷惑を掛け、それ以上に相手を落胆させることになるかなんて─── その時は、少しも考えてもいなかったんだ。


 
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