たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
Schizanthuses(シザンサス)
「……樹生、お前ちゃんと寝てるのか?」
─── 深夜2時。
薄明かりの中で机に向かっていた俺に、仕事から帰って来た父の声が掛けられた。
「……そっちこそ、仕事ばかりであんまり寝てないくせに。っていうかアレだね、……おかえり」
「ああ……ただいま。今日は急患が入ってな……それより、本当にしっかり寝ているのか?毎日ずっと遅くまで勉強してるみたいだが……」
「……ああ、うん。でも、どんなに時間があっても足りないんだ。っていうか、実際、試験まで時間ないし」
言いながら小さく笑えば、父は眉間の皺を更に深めて俺を見つめた。
そんな父から視線を外して再び机に向かえば今更ながら時計が目に入り、寝る予定だった時間を疾うに過ぎていたことを改めて知る。
(……そういえば、父さんが帰ってくる時、玄関が開いた音、したかな)
ぼんやりとそんなことを思って、靄(もや)の掛かった思考を晴らすように小さく頭を振った。