たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「─── 良かった、貸出中にはなってない」



図書館に設置されている検索機の前で、思わずそんな言葉を零した俺は、足早にその本が置かれているであろう本棚へと向かった。


誘われた本棚は、ここに通い慣れていた俺でも今日の今日までただの一度も足を運んだことのないような、図書館の中でも酷く奥まった場所にあって。


学生や主婦が多く本を探している本の森とは対照的に、そこにはたった一人、腰の曲がったおじいさんが本を探しているだけだった。



「……えーと、“ Iの10-10 ”、」



そんなおじいさんの邪魔にならないよう後ろを通り過ぎ、指定された本棚の前まで行くと検索機に表示されていた番号を探していく。


─── けれど、その間も、俺はどうして栞がこんなことを頼んできたのか、その真意を考え続けていた。


 
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