たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


意外にもアッサリと見つけることのできたその本に、流れのままに手を伸ばしたけれど、触れる直前で咄嗟にその手を止めた。


“その本に、今の私から先輩へ贈る、最大級の想いを残しておきます”


送られてきた、栞からのメッセージには、確かにそう書かれていた。


けれどそれは、もしかしたら俺がその“最大級の想い”ってやつを受け取ってしまえば、栞との繋がりも何もかもがそこで途絶えてしまう、そういうものなのかもしれない。


俺との全てを過去にして、前に進もうとする栞の決意が書かれているのかも。


だとしたら俺は、それを読まなかったことにして……受け取らなかったことにしてしまった方が、今の自分の為なんじゃ───



「……お兄さん、その本、借りるのかね?」


「っ、」


「もし借りんのなら、ワシが借りてもいいかねぇ?」



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