たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


突然声を掛けられて、弾けるように振り向いた。


そうすればそこには、先程後ろを通り過ぎたおじいさんがいて、俺と本を見ながらニコニコと笑顔を向けている。



「あ……すみません、今、僕もこれを借りようと思って……」


「ほう……それは残念……。久しぶりにその本を見かけたんで、ワシも借りたいと思ったのじゃが……」


「そうなんですか……あの、それならコレ─── 」



「コレ、どうぞ」、と。


臆病な俺は、たった今手に取ったばかりのその本を開くことなく。


本を借りたいと言っている、そのおじいさんに渡そうと、腕を伸ばしたのだけれど、



「っ、」



渡す、直前。

その本のページの間に、“あるもの”が挟まっていることに気が付いて、思わず伸ばした手を止めた。



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