たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


* * *




(……と、いっても実は1つ、困ったことがあるんだよね)



駅までの道を一人で歩きながら、私は空になった制服の胸ポケットに触れていた。


─── 生徒手帳。

ここには、いつもなら生徒手帳が入っているはずなのに、今はない。


今朝、家を出る時には、きちんとあることを確認したはずなのに、学校に着いたらなくなっていた。


と、いうことは。普通に考えれば今朝のあの出来事のどこかで生徒手帳を落とした……ということに、違いなくて。



(困ったなぁ……)



駅に着いたら、落とし物として届いていないか駅員さんに聞いてみよう。


そう思って、私は歩きながら予め駅員さんに見せるための文章を、携帯に打ち込んでいた。


と、



「……平塚 栞(ひらつか しおり)さん」


「……っ!!」


「歩きながら携帯触ってると、また転ぶよ?」


 
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