たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
* * *
蓮司とアユちゃんと駅で別れた私は、図書館までの通い慣れた道程を、いつもより時間を掛けて歩いた。
先輩と微笑み合いながら歩いた道程、花弁の舞う中を歩く先輩の姿、揺れる瞳で前を見据える先輩の綺麗な横顔。
思い出せば思い出すほど胸が苦しくなって。
それも今日で終わりだと言い聞かせながら、私は止まりそうになる足に精一杯力を込めて前に進んだ。
けれど、図書館に着いてしまえば、そんな風に気持ちの整理をすることは容易にはいかなくて。
入口の扉を抜け、本の森を通り過ぎ、先輩への想いを残した本のある本棚の前まで来ると、ついに足は一歩も前に動かなくなった。
(……行か、なきゃ)
先輩への想いを、一冊の本に託したあの日。
本当ならすぐにでも、その想いの行方を追うために、ここに来るべきだったのに……
最後の最後に臆病な私は、結局、今日の今日までその想いの行方を確かめることが出来ずにいた。