たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「……っ、」
一度だけ深く深呼吸をした私は、床に根を張ってしまっていた足に力を込めて、一歩、前へと歩を進める。
一歩、また一歩と、まるで渓谷に架けられた吊り橋を渡るような足取りで前に進めば、呼吸まで苦しくなって。
ようやく本のある棚の前まで辿り着くと、一度だけ瞼を閉じてからゆっくりと、目的の本の姿を探した。
(……あった、)
すると、すぐに私の目に飛び込んできた一冊の本。
それを見てゴクリと喉を鳴らすと─── まるで魔法に掛けられたかのようにゆっくりと、私はその本を本棚から引き出した。