たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「(……なんか、疲れちゃった)」



腕の中に顔を埋めてそんなことばかりを考えていれば、段々と靄(もや)の掛かってきた思考。


緊張で、昨日の夜は全然眠れなかった。


今日で全てに区切りを付けるのだと思えば、先輩のことが1秒たりとも頭から離れなくて。


だから───


ぼんやりと揺れる思考の中、やっぱり瞼の裏に浮かんだのは最後に見た、駅での樹生先輩の後ろ姿で。


その残像を追いながら聞こえたのは、「栞」と私を呼ぶ先輩の温かい声。


そんな空想に小さな笑みを零し、頬に温かい涙の雫が伝い落ちるのを感じながら、私はそのまま静かに目を閉じた。


 
< 439 / 475 >

この作品をシェア

pagetop