たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「……自己満足だけど、勝手に中を見ちゃった以上、せめて、それだけは謝りたくて。駅員に届けずにこうして待ってたのは、それが理由」
「改めて、ごめんね」、と。憂いを帯びた表情でそんなことを言う彼に、目を奪われない女の子はいないだろう。
どこか寂しさを宿した彼の瞳に見つめられ、私の心臓は不用意に高鳴って、思わず息の仕方すら忘れそうになった。
「とにかく、それだけ伝えたかったんだ」
「……、」
「帰るところを、手間取らせちゃって、ごめんね?」
「(……ありがとう、ございます)」
「え、」
「(わざわざ届けてくださって、ありがとうございました)」
そのまま踵(きびす)を返そうとする彼に、携帯で文字にせず、思わず口パクでそう伝えたのは、なんとなく。
なんとなく─── 彼には自分の“言葉”で、お礼を伝えたいと思ったからだ。
「……、」
「……、」
といっても、伝わるはずもない言葉。
彼には聞こえるはずのない、私の言葉だ。
そんな私の行動に、目を見開いて固まってしまった彼を見て、私は慌てて携帯のメールの画面を開いた。