たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
いつだって、誰が見たって完璧で、誰しもが羨むようなものを持ち合わせた先輩が今、不安に揺れている。
酷く自信なさ気に私を見る先輩は、その言葉を聞いて、私が呆れてしまうとでも思ってるんだろう。
私が、離れていくとでも思ってるんだろう。
先輩は、本当に。
本当に、どうしようもないくらいに大人で─── 小さな、子供みたいな人。
「私の……気持ち、は。今も、あの本に残した、まま、ですから……」
何年ぶりに出るようになった自分の声は、まだ扱い方を上手く思い出せなくて。
それでも辿々しく想いを口にすれば、突然先輩が私から顔を背けて大きな溜め息を零した。
「い、つき……先輩……?」
「……普通に、引かれるかと思った」
「……え?」
「自分の意志とは関係なく、一人の男の将来を押し付けられるなんて。絶対、気持ち悪がられるかと思ったのに……」
そう言うと、再び深く溜め息を吐き出した先輩は、「受験よりも緊張した……」なんて、そんなわけのわからないことを言う。