たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「先輩……わた、し……先輩のこと……本当に……だいすき、ですよ……?」
「っ、」
「大好き、だから……だから、ほんとうに、嬉し─── っ、」
“嬉しいです”、と。
なんとか先輩に気持ちの全てを伝えたくて。
紡ごうとした言葉は─── 突然私の唇に唇を重ねた先輩によって叶うことはなかった。
「もう……それ以上、何か言うの、禁止」
「……っ、」
い、今……っ、今、キ、キス……っ!?
一瞬の出来事に頭がついていかず、一人で慌てふためく私に今度こそ呆れたような溜め息を吐き出した先輩は、愚痴を零すように言葉を続ける。
「……大体にして、声、出ちゃってるし。俺が医者になって、俺の力で声が出るようにしたかったのに……って、これ以上言うと、負け犬の遠吠えみたいだから止める」
「……っ、」
「それに……初めて聞いた声で俺の名前を呼んで、その次に言った言葉が “ 好き ” 、とか。それ……何かの、作戦?」
「っ、」
「……もしも作戦だとしたら、栞は将来、悪い女になりそうだ」
“これから、しっかり見張ってないと”、なんて。
そう言った先輩の表情は意地悪なものだったけれど、今まで見たこともないくらいに赤く染まっていて。
その事実に、思わず私まで顔が熱を持ったかのように熱くなった。