たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
通い慣れた、駅のホーム。
2人でしゃがみ込む私達を、先ほどから迷惑そうな顔で見る人達の視線が痛い。
それは先輩も同じだったようで、思わず立ち上がろうと足に力を込めれば再び強く引かれた腕。
「せん、ぱ─── 」
「名前、」
「っ、」
「最後にもう一回、名前、呼んで?」
そっと、耳元で囁くように。
まるで、甘い罠に誘うように言葉を紡いだ先輩に誘われるがまま、私は静かに口を開く。
「いつ、き……せん、ぱい……」
「……、」
「いつ、き……」
「……、」
「……樹生、」
愛おしいその名前を紡げば、再び涙の雫が一筋、頬を伝って零れ落ちた。
そんな私を見て何故か、一瞬だけ恨めしそうな視線を寄越した先輩は、「駅のホームで、迷惑な2人だ……」と。
周りの人達の声にならない心の声を口にしてから、「……でも、ここまできたら、とことん周りに迷惑かけることにした」なんて。
そんなことを言って笑みを零すと、再び私の唇に、花に止まる蝶のような……優しい、キスを落とした。
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『Shepherd’s purse(ナズナ)』
あなたに私のすべてを捧げます