たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「でも、それだけ文字打つの速かったら、生徒手帳に書いておく必要も─── ああ、そっか。もしも携帯を忘れたり、なくした時の為の対策?」



自分で言った言葉に、言いながら答えを見つければ、彼女は困ったように笑って小さく頷いた。



「(……はい。携帯にももちろん、生徒手帳に書いてあることと同じことを打って、初対面の方にはすぐに画面を見せれるように保存してます。ただ─── 先輩が今言ったとおり、携帯を忘れた時に困ってしまうので、生徒手帳は非常時の会話の手段として持ち歩いてて……)」



そこまで一気に打った画面を俺に見せると、悲しげに視線を落とした彼女。


その様子を見て、ああ、と思った。


彼女はつい先ほど、“声が出なくなって、もう5年が経つ”と言っていた。


多分その【5年前】に、何か【声が出なくなるキッカケ】みたいなものがあったんだろう。


彼女の元に生徒手帳を返すために改札前で待ち伏せなんてことをしながら、俺は失声症というものについて、携帯で調べていた。


インターネットの検索で【失声症】と入れると、検索表示には失声症に関するキーワードがズラリと並ぶ。


その中でも上位に位置していたのが、【失声症 原因】だ。


そして、導かれるようにページを叩くと、そこに書かれていたある言葉が目についた。


 
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