たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「……あ、そうだ」


「(え?)」


「さっき返した生徒手帳、もう一度貸してくれない?あと、出来ればペンも」



突然何かを閃いたらしい彼が、優しく目を細める。


そんな彼の言葉に驚きつつも、私は胸ポケットにしまった生徒手帳を慌てて取り出すと、鞄の中に転がっていたペンを拾い、彼の手に乗せた。


すると、「ありがとう」と、再び優しく笑った彼が、その生徒手帳の1ページを開いてサラサラと何かを書き出した。



(……何を、書いてるんだろう)


「……うん、これでいいかな」



だけど、彼の行動の意図を思いつく間もなく生徒手帳は再び私に返された。


開いたまま渡された生徒手帳。

受け取って、彼が何かを書いていたページを見て、思わず目を見張った。


 
< 53 / 475 >

この作品をシェア

pagetop